ゴルフアイアンの「打感」を決める3つの軟鉄素材の違いと特徴
■ はじめに:アイアンの“打感”を決めるのは素材だ
ゴルフクラブの打感を語る上で、欠かせない要素が「素材」。
特にアイアンにおいては、フェースの反発性能や設計だけでなく、素材の炭素含有量(C%)が、手に伝わる“柔らかさ”や“芯の重さ”に大きく影響します。
現在、多くの国産軟鉄アイアンに使われているのが「S25C」「S20C」「S15C」という3種類の炭素鋼。
この数字は炭素の含有量を表しており、数値が小さいほど炭素が少なく、より柔らかく加工しやすい性質を持ちます。
■ 1. S25C:最もポピュラーな“軟鉄の王道”
● 基本情報
- 名称:S25C(JIS規格名:S25C=炭素含有量 約0.25%)
- 呼称:機械構造用炭素鋼(SはSteel、CはCarbon)
- 主な用途:フォージドアイアン、ウェッジ、ネック部など
● 特徴と打感
S25Cは、適度な硬さと柔らかさを兼ね備えた万能素材。
熱処理や鍛造に対する耐性が高く、量産時の品質安定性にも優れています。
打感としては「しっかり芯のある柔らかさ」で、プロからアマチュアまで幅広いゴルファーに好まれる標準素材です。
● 採用例
- 三浦技研(CB-301、TB-ZEROなど)
- Mizuno Proシリーズ
- Bridgestone TOUR B
- Epon AFシリーズなど
■ 2. S20C:より粘りのある“軟らか打感”
● 基本情報
- 名称:S20C(炭素含有量 約0.20%)
- 特徴:S25Cより炭素量が少なく、靭性(ねばり強さ)が高い
● 特徴と打感
S20CはS25Cよりも一段階柔らかく、手に吸い付くような打感が特徴。
鍛造時の成形がやや難しくコストも上がりますが、その分「球持ち感」や「フェースの粘り」を感じられる、上級者好みの素材です。
特に「軟鉄鍛造の中でも最高クラスの打感を追求したい」クラフトマンやツアープロに人気。
ショット時の“フェースがボールを押し返す感触”を重視するプレイヤーに最適です。
● 採用例
- 本間ゴルフ TW757 Vx
- Miura TC-101(特注モデルに採用例あり)
- Fourteen FH V1
- GrindWorks PR-202など
■ 3. S15C:鍛造素材の“究極形”、極上の打感
● 基本情報
- 名称:S15C(炭素含有量 約0.15%)
- 特徴:炭素量が非常に少なく、極めて軟らかい
● 特徴と打感
S15Cは、鍛造できる炭素鋼の中でも最も柔らかいクラス。
素材自体が粘り強く、熱間鍛造やCNC加工にも非常に手間がかかるため、採用メーカーは限られます。
打感は他を圧倒するほど“とろけるようなソフト感”。
ボールを潰して押し出すような感触が強く、上級者から「音まで柔らかい」と評されることも。
ただし、素材が柔らかい分、傷やへこみがつきやすく、錆にも弱いという弱点があります。
そのため、手入れや保存環境を整えられる“本物志向のプレイヤー”向けです。
■ 4「打感=柔らかい」ではない?
実は、素材が柔らかければ“打感が良い”とは限りません。
打感は、素材だけでなく次の要素によっても変化します。
- フェースの厚み
- キャビティ構造 or マッスルバック
- 鍛造温度や冷却工程
- 表面仕上げ(サンドブラスト・クロムメッキなど)
- シャフトのしなりや振動吸収性
つまり、同じS20Cでも製造方法やヘッドデザイン次第で“打感の方向性”が変わるのです。
そのため「素材+設計+組み合わせ」で最終的な打感が完成します。
■5. どの素材を選ぶべきか?
- S25C:扱いやすさと打感のバランスを求める方に最適。練習量が多く、長く使いたい方にもおすすめ。
- S20C:弾道コントロールや“押し感”を重視する上級者に。特にスピン性能を引き出したいウェッジとの相性も◎。
- S15C:素材の限界まで打感を追求したい、本物志向・感性派プレイヤー向け。
ただしメンテナンスを怠ったり扱いが雑になってしまう方は注意が必要です。
■6. まとめ:打感を支える素材の哲学
「柔らかい=良い」ではなく、自分のスイングスピード・弾道・好みに合う“質感”を選ぶことが最も重要です。
S25C、S20C、S15Cのどれもが優れた素材であり、
違いを知ることで、アイアン選びはさらに奥深く、楽しいものになります。
■ 終わりに:打感の違いを体感してみよう
スペック表だけでは伝わらない“素材の響き”を感じるためには、
実際に打ってみるのが一番。
“究極の軟鉄”を打った後は、
S25Cでも「硬く感じる」ほど、その差を実感できるはずです!
素材であなたのスイングと感性を最も満たす一本を、ぜひ見つけてください!